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その後。落ち着いた頃合いになって、夏樹が思いもよらぬことを言ってきた。
「あ、そーだ。言い忘れてたけど、手錠とかアイマスク使って責められんのお客さんの方だかんね?」
「……は?」
ぽかんとする隆之に対し、夏樹はイタズラっ子のような笑みを浮かべて続ける。
「オプションがあるとはいえ、うちの店だとボーイはS限定なんだよねぇ」
「なっ、騙したのか!?」
「んー? そんなつもりなかったんだけどなあ。俺、嘘なんて一つもついてねーし」
「お、おい……」
「普段は優しい隆之さんだけど、エッチのときは結構強引だったりすんの――大好き、だよ?」
甘ったるく耳元で囁いたのち、今度は妖艶に微笑んでみせる夏樹。
つまりは、最初から手のひらの上で転がされていたということだ。まんまとしてやられたと思うと、複雑にもなってしまう。
「こっちは何も見えないのに、無言で責めてくんのとかゾクゾクしたあ~」
「………………」
隆之は余計に羞恥を煽られる。
が、やはり惚れた弱みなのだろう。夏樹のことが可愛くて仕方がないし、彼の望みなら何だって叶えてやりたいと思うのだ。
(まったく……敵う気がしないな)
そんな思いとともに、隆之は赤くなった顔を手で覆った。
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