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「旅行から帰ってきたのかい?黙って行ってしまうから心配したよ」 僕は出来るだけ明るい声で、インターホン越しにそう話しかけた。 「はい」 だが麻里香からは木で鼻を括ったような返答ばかりが繰り返された。 「一体どこに行ってたの?まあ、言いたくなければ別にいいけどさ。君がリラックスできたならそれでいいよ」 「はい」 「またこれからは会社に出勤するんだよね? 今日はどうする?まだ旅の疲れがあるようだったらこのまま帰るけど。もしよかったら食事でも一緒にしないか?」 「はい」 「君の好きなトラットリアにでも行こうか。今日は僕がおごるよ」 「はい」 「そう。じゃあどうしよう、このまま外で待ってればいいのかな?」 「はい」 「じゃあ、これから出てきてくれるのかな?」 「はい」 「じゃあ待ってるよ」 「はい」 だがその後、10分経っても20分経っても、麻里香は部屋から外に出てこなかった。
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