温もり

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「ほら!優馬に会ったのは初めてだろう?写真で見てたより可愛いし……その、予想以上に愛しすぎる反応もするから、抑えられなくなってしまって……」  ……そういえば幼い頃、クラスメイトの父親が我が子可愛さにめっちゃチュッチュしてたな。その光景はとても気持ち悪かったのをよく覚えている。我が子を舐め回すな。  と、いう事だろうか?  悪いがそれが許されるのは小学校低学年までだぞバカ親父。 「悪いですけどそれが許されるのは小学生低学年までですアホ理事長」  おお〜、なんか双子っぽい!俺が思ったこと兄さんが代弁してくれた!俺何も言ってないのに!  初の双子っぽいことで勝手に盛り上がっていたら、ふいに扉が叩かれた。 「ん゙ふ、くくく……っし、失礼します、」  笑いを隠すつもりなんてきっと無いのだろう、そこには雪園くんと見た事ない人が立っていた。  …………え、あれ!?そういえば俺と父さんが、あ、あんなことしてる時も雪園くんって部屋の前に立ってたんじゃ…?  間違いであってくれ、そんな願望を胸に雪園くんに目を向ける。  そっと逸らさせる。 「兄さん。俺、もうやっていけないかも……」 「え!?」 「くくく、お前の弟随分面白いじゃねぇか」 「雪園くん、遅かったね」 「いやあ、どこかの理事長サマがやらかしてくれた事案の処理で忙しかったもので」 「それはそれは、処理してくれてありがとう」  なんかバチバチし始めたんだけど、今度は何? 「優馬の部屋、豪華だったでしょ?あれ、理事長が誰にも相談しないで勝手に進めたやつなんだよ」 「ああ……」  やっぱりアンタがやらかしてたのか、予想を遥かに超える暴れん坊だよ。理事長だろアンタ何やってんだ。  そう言えばこの人、母さんと家のことで悶着した人だったな、忘れてた……。 「早めに気づいたから良かったものの、対処出来ていなかったらどうなっていたでしょうね?」  にこ。と闇を従えたかのような笑みは、どこか母さんに似ていた。……怒らせないとこ。 「あはは……兄さんが対処してくれて助かったよ。ありがとう!」 「うちの優馬がどこまでも可愛い……」  顔を両手で覆いながら悶える姿は、やはり父とは少し違って見えた。でもどちらからもやっぱり愛情みたいなものは感じられるから、つい嬉しくなって口元がさらに緩む。 「双子の弟って聞いてたが、お前とは随分印象が違うな?」 「うわっしょい!だ、だれ……」 「ぐく…っ」  真上から急に声が聞こえれば誰だって驚くに決まってるだろ!笑うのを今すぐにやめろ!  と思って真上を睨んで分かった。誰かに似てると思ったら、雪園くんか!ていうかさっきから父さんも兄さんも雪園くんって言ってたな?  兄さんにタメ口ってことは、同年代か? 「俺が誰か知りたいって顔してるな。教えてやろう。雪園圭一郎(けいいちろう)だ。ちなみにこの学園の生徒会長で3年だからな、よーく覚えとけ?」  こりゃまたクセの強い人が来たな…。そしてとんでもないイケメン。雪園(弟?)くんは結構無関心キャラなのに、この人はいかにも傲慢です!って顔に書いてある。さすがに言い方失礼過ぎだけど心の中だし気づかれないだろう。うん。  まあよく言えば自信に満ち溢れてる、自分を信じ過ぎているって感じかな。  これくらいの方が生徒会長は務まるのかもしれない。 「お前の兄は俺の補佐、副会長だ」 「……あぁ!アホ親父のやらかした事案を片付けれたのってそういう!」 「さすが一般科編入試験第2位だな、頭の回転が早くて助かる」  アホと言われてしまった理事長は頭を机に突っ伏したまま動かなくなってしまった。
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