いざ、霜栄学園

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 何も答えてくれる気がないみたいなので勝手に帰ろうとしたら鍵をチラつかせて、お前鍵もってないだろって言ってきた。厳密には言葉なんてなかったけど。  くっそう!鍵ポッケに入れるのは反則だろ!さすがに人の手が入ってるポッケに手を突っ込むのは……っ! 「着いたぞ」  と言って案内された最後の場所、それは理事長室。 「いやいやいや、何でここがトリなの!?ていうかそれってどういう」 「俺も分からん。兄貴から今朝急に言われたから連れてきたんだよ」 「嫌だああ!入りたくない!」 「おいあまり騒ぐな、その巨体でしがみつくな重い」 「ヒドイ!!」  校内の案内っていう形で巧妙に騙したクセに!ひとりだけ逃げる体制に入るの許さないからな!  俺はそれはもう必死にしがみついたさ、さながら幼児のように。  それでもギャアギャアと騒いでいれば当然部屋の中にいる人に声は届くわけで。 「君たち。ふたりで中に入ってくれるかな?」  そんな声が聞こえた瞬間に俺も雪園くんもピタリと動きを止める。俺なんかもはや息してないんじゃないか? 「……っ、はぁ、私もですか?理事長」 「その通りだ雪園くん」  一足先に冷静を取り戻した雪園くんが制服の襟を直しながら話しかける。  あ、今更だけど俺たちはどっちも制服だ。むしろその段階で気づくべきだった…。誰かとすれ違うかもしれないからその方が都合いいだろとか、それっぽい言葉に騙された。 「仕方ない……ほら、いつまでも固まってないで入るぞ」 「ま、待って、心の準備が」 「……よく分かんねぇけど、悪いことじゃないだろ」  少し呆れたように発せられた言葉は、どこか俺を安心させようとしてるみたいだった。  深呼吸をひとつ。  決心をつけて重い腰を上げる。 「え、そういえばさっき私って言った?」 「は や く は い る ぞ」  どうやら余計な事を聞いたしまったらしい。
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