温もり

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温もり

 部屋の中の人は椅子に座ったまま組んだ手を口元に当てて、笑っていた。  いや怖い怖い!なにその圧、俺今まで母さんからしか感じたことないそんなもの! 「まずは雪園くん、案内ご苦労だったね。ところでお兄さんの方に任せたと思ったんだけど」 「至急片付けなければいけない案件が出来たとかで、代わりに私が」 「そうか。お兄さんから何か聞いているかな?」 「……いえ」  正面の人物は依然として笑顔を絶やさない。雪園くんよく目逸らさず話せるな。最強か? 「ふふ。雪園くん、私は隣の彼と二人きりになりたいんだけど、扉の前で待機してもらっていいかな」 「……………………承知しました」  承知しないで?と言いたいところだが、どうやらすぐ外で待機しているらしいので、もしもがあったら駆けつけてくれるだろう。……多分。 「さて、やっと二人きりになれたね」 「ソ、ソウデスネ」 「緊張しているのかな?ならそこのソファに座るといい。今お茶と菓子を用意するから」 「……ハイ」  緊張してるかって?もちろん。だってなんでここに居るか分からないんだもの。緊張もしてるけど、それよりも怖いが勝ってる、かな。 「お待たせ。隣、いいかい?」 「ど、どうぞ……」  そっと、優しく俺の隣に座るこの人はきっと悪い人じゃない。  本当にこの人が俺の? 「あ、やっと目が合った。私の可愛い優馬」  ハイ確定〜。この発言は確定で俺の父親ですね。でもこの人常磐(ときわ)なんだよな…。 「ねぇ、気になってたんだけどその眼鏡は何?」 「え、ああ、目が悪いのと普通に避けるためです」 「凛子(りんこ)の入れ知恵かな?」 「ハハ、そんな感じですね」  入れ知恵とはつまり、ボーイズラブのことである。男子校、更には顔も悪くない俺。閉鎖的な空間で万が一が起こってはいけないと、母が渡してきた物がそういった本(BL)だった。  俺は半信半疑に本を手に取り読み進めた。読み漁った。そして思った以上にハマった。  なのである程度は知識がある。ということは、万が一を避ける能力があるということだ。力も別段弱いわけじゃないし、いざという時は何とか出来ると思う。
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