168人が本棚に入れています
本棚に追加
温もり
部屋の中の人は椅子に座ったまま組んだ手を口元に当てて、笑っていた。
いや怖い怖い!なにその圧、俺今まで母さんからしか感じたことないそんなもの!
「まずは雪園くん、案内ご苦労だったね。ところでお兄さんの方に任せたと思ったんだけど」
「至急片付けなければいけない案件が出来たとかで、代わりに私が」
「そうか。お兄さんから何か聞いているかな?」
「……いえ」
正面の人物は依然として笑顔を絶やさない。雪園くんよく目逸らさず話せるな。最強か?
「ふふ。雪園くん、私は隣の彼と二人きりになりたいんだけど、扉の前で待機してもらっていいかな」
「……………………承知しました」
承知しないで?と言いたいところだが、どうやらすぐ外で待機しているらしいので、もしもがあったら駆けつけてくれるだろう。……多分。
「さて、やっと二人きりになれたね」
「ソ、ソウデスネ」
「緊張しているのかな?ならそこのソファに座るといい。今お茶と菓子を用意するから」
「……ハイ」
緊張してるかって?もちろん。だってなんでここに居るか分からないんだもの。緊張もしてるけど、それよりも怖いが勝ってる、かな。
「お待たせ。隣、いいかい?」
「ど、どうぞ……」
そっと、優しく俺の隣に座るこの人はきっと悪い人じゃない。恐ろしくケダモノな気配がするけど。
本当にこの人が俺の?
「あ、やっと目が合った。私の可愛い優馬」
ハイ確定〜。この発言は確定で俺の父親ですね。でもこの人常磐なんだよな…。
「ねぇ、気になってたんだけどその眼鏡は何?」
「え、ああ、目が悪いのと普通に避けるためです」
「凛子の入れ知恵かな?」
「ハハ、そんな感じですね」
入れ知恵とはつまり、ボーイズラブのことである。男子校、更には顔も悪くない俺。閉鎖的な空間で万が一が起こってはいけないと、母が渡してきた物がそういった本だった。
俺は半信半疑に本を手に取り読み進めた。読み漁った。そして思った以上にハマった。
なのである程度は知識がある。ということは、万が一を避ける能力があるということだ。力も別段弱いわけじゃないし、いざという時は何とか出来ると思う。
最初のコメントを投稿しよう!