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ひととき
突然だが、俺にはひとつ上の兄がいる。とは言っても双子なのだが。
なぜ双子なのにひとつ上の~という言い方をしたかというと、母いわく、俺が母の腹の中で踏ん張って出てこなかったせいで2日ズレたんだとか。腹の中にいる赤ん坊が出てこずに踏ん張るなんてある?赤ん坊の時の俺どんだけ自我強かったんだよ。
しかもそのズレた2日というのが、なんと3月31日と4月2日。一歳差というのも、学生時の限定的なものだ。
そんな訳で俺と兄は世にも珍しい、双子なのに誕生日が違うという星のもと産まれてきた。
そしてそれを昨日聞かされた俺。兄がいたことさえ知らず今までずっとひとりっ子だと思って生きてきたんだけど?色々順序間違え過ぎじゃない?うちの母親。
まずそこをツッコんだら、
「え?知らなかったの?あっれ、言ってなかったっけ?ごめーん!」
って、めっちゃ軽いノリで返された。こういうとこあるうちの母親。
まあ別に兄がいたから何か変わるってこともないのだが。
ところで
「なんで兄がいるなんて今更言ったんだよ」
「だって自分によく似た顔の男が急にテレビ出たらびっくりするでしょー?だから双子のお兄ちゃんがいるのよ〜って教えてあげたの」
そら誰でも驚くわ。毎日鏡越しに見てる自分の顔のそっくりさんがテレビ出てればそりゃ……
「ん?テレビ?兄さんって芸能人なの?」
「常磐財閥の跡取りで、今度テレビに映るですって」
「へぇ、ときわ………………ぇはあああ!?!?」
「ちょ、うるさ」
「と、ときわって、あの常磐!?」
常磐と言えば名家中の名家!
ありとあらゆる分野精通し、過去には家系から総理大臣を出したこともあるっていう、あの……!?
「え!?兄跡取り!?え、俺弟!?でも苗字違う!?!?」
「ちょっとうるさいわよアンタ!近所迷惑でしょうが!」
「ぃで!!いやだって!ど、どういうこと……」
「はぁ、そうねぇ、私ったらホントに何も話してなかったのね。悪かったわ。ちゃんと話すから、落ち着いたら声掛けて」
「ゔぁぇ……?」
昨日でもキャパを越える情報だったのに、どういうことなんだよ……。
むり、今日は、ねる……。
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