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◯雛鳥の部屋(続き、午後)
※驚愕の雛鳥の顔アップ
雛鳥「(涙目で)ひどいよ……なんでこんなことするの」
雛鳥、瑠偉の手を振り払い、
自分の体を抱きしめる。
悲しみと失望の混ざった眼差しを瑠偉に向けたまま。
雛鳥「人のコンプレックス暴いて、嬉しい……?」
雛鳥「瑠偉はそんな人じゃないって、他のみんなとは違うって、思ってたのに」
全ての記憶を取り戻した瑠偉。
我に返って冷静に、
瑠偉「ひな、聞いて」
片手で雛鳥の頬を撫で、
もう片方の手で身体を掻き抱く雛鳥の手首を取る。
瑠偉「すまなかった……いきなり乱暴なことを、して」
雛鳥「…………(顔をしかめて目を逸らす)」
瑠偉「俺も取り乱していたんだ。本当に、ごめん」
雛鳥「取り乱すとか、そういう問題? ワケわかんない……」
瑠偉、愛おしそうに雛鳥の頬を親指で撫でる。
瑠偉「ひな……火傷の痕。いつからあるの?」
雛鳥「そんなこと聞いてどうするの」
瑠偉「いいから教えて」
雛鳥「私が山で拾われた時にはもうあったって聞いてるけど……いつからなのかは、はっきりと分からない」
瑠偉、確信に満ちた顔をする。
雛鳥、また鬱屈に苛まれて、
雛鳥「考えてたんだ……ずっと。こんな醜い形の痣、自然にはつかない。きっと私を捨てた両親がつけたんだ……って」
瑠偉「…………」
雛鳥「赤ちゃんだった私に焼印を押し当てるなんて……。そんなに私が憎かったのかな……っ」
瑠偉、いたたまれない顔。
雛鳥の腕を放して、
着ていたトレーナーを脱ぐ。
瑠偉の鍛えられた逞しい体躯が白昼にさらされる。
雛鳥、彫刻のような瑠偉の身体の左胸に、
自分のものと全く同じカタチの火傷痕を見る。
雛鳥「…………これ」
雛鳥、おそるおそる瑠偉の火傷痕に触れる。
雛鳥「私のと、同じ形……っ」
雛鳥「でも瑠偉のは少し小さい」
瑠偉「俺はニ歳の時にこれを押された。ひなが生まれてすぐの頃だ」
瑠偉「子供の成長に応じて皮膚は伸びる。ひなはまだ赤ん坊だったから、そのぶん俺よりも大きく広がったんだろう」
雛鳥「これって……同じ焼印なの? でもどうして……っ」
瑠偉「生家のしきたりで焼印を押された《俺の許嫁》は生まれてすぐに産院から消えた。警察の調べで誘拐されたとまではわかった。生きていれば、ひなと同い年だ」
雛鳥「誘拐……?」
瑠偉、自分の火傷にふれていた雛鳥の指先を、
手のひらで包みこむ。
瑠偉「ひなは……生まれてから消息を絶っていた俺の許嫁は。俺と同じ苦痛を背負って、生き抜いていた」
雛鳥M「瑠偉の許嫁——?」
雛鳥「まって……。私、どういう事だかっ」
瑠偉「この火傷痕は、互いが許嫁同士だという《しるし》だ」
瑠偉M「これまでずっと、俺を苦しめる忌まわしいものでしかなかった」
瑠偉M「ひなにとっても、それは同じだったはずだ」
瑠偉、胸元を隠す雛鳥の手を引き剥がす。
瑠偉「この忌むべきしきたりが、ひなと俺を繋ぐものならば……」
瑠偉「愛おしいよ」
露わになった雛鳥の、
火傷痕に口付ける。
雛鳥「…………っ」
瑠偉、火傷痕にちゅ、ちゅ、と優しいキス。
雛鳥、驚いてびくんとなる。
それでも、恍惚に頬を赤くして目を閉じる。
雛鳥M「この火傷の痕が、瑠偉の、許嫁のあかし……?」
雛鳥M「私が、その許嫁なの……?」
瑠偉、顔をあげてひなを見つめる。
雛鳥、涙目のまま、まだ信じられない様子。
瑠偉「見つけた……俺の許嫁」
雛鳥、ぼうっとなった目を開ける。
雛鳥「瑠偉…………っ」
互いの顔が近づいて、
唇が重なる。
※引き、瑠偉の逞しい背中。
指先を絡ませて寄り添うふたりの、幸せな口づけの図
⸜🌷︎⸝
すっかり長くなってしまいましたが、
ここまでお読みくださったお優しい読者様……
本当に有り難うございました!
ではでは、また……🤍
(๑˘̴͈́꒵˘̴͈̀)۶ˮ вyё вyё
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