何もかも新しくなっていく

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…………  市の管理システムに、ぼくはすぐに紛失届けをだしたけど、きっと、もう遅いんだ。スマホの紛失はこの時代では致命的だった。ポイントが消滅したも同じだ。ポイントがないと生きていけない。そして、ぼくの市民としての存在価値の消滅も意味しているんだ。  確かにスマホは、もう一人のぼく自身だ。  ぼくの持ち物で、ぼくだけしか持ってはいけない。 「スマホ……すぐに見つかればいいんだけどな……」  せっかく爆買いした電子書籍ももう読めない。  気に入った「春風と共に桜はすぐに散る」はまだ読んでいないけど、もう読めないのだ。    ぼくはそう思い。沈んだ気持ちで何気なく。あの本屋の前へと来てしまっていた。今じゃ店の壁は全て透明なパネル式なんだ。ぼくは自然とパネル越しから彼女を探していた。  本屋の中央に彼女はいた。どうやら、石井さんはスクリーン上をタッチしたりして、本棚のメンテナンスをしているようだ。  そしたら、ぼくに気がついてくれた石井さんが、店内からこちらに向かって、パネル越しに手を振ってくれた。  広い店内へ入ると、彼女はぼくの話を聞いて。
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