8人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
――――
本屋を全部洗濯機にでも入れたみたいな大掃除もやった。
本棚の至る所に、設置された無数の電子書籍を、PRしているスクリーンを取り替えるという蟻のように細かな作業もやった。
石井さんと商品説明や接客の特訓もやった。
「うん?」
そんなある日。
本屋で、ぼくは不意に例の何も映っていない本棚に向かって、右手を突っ込んでしまった。ちょうど掃き掃除をしていた時に、バランスを崩したからだ。
でも、本棚のスクリーンには感触が何もなかった。
「あれ?」
ぼくの右手はスッとスクリーンの中へと入ってしまった。
石井さんがそれを目撃して、慌ててぼくの右手を強く握って引っ張ってくれた。
だけども、それも虚しくぼくの身体全部がスクリーンの中へと吸い込まれてしまった……。
「わっ!」
スクリーンの中は、見たこともない電子空間になっていた。
「あれれ?? スマホがある?」
ぼくの消えたはずのスマホが、目の前で宙に浮いていた。
何故だろう?
ひょっとして、ここの本屋で無くしたんだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!