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アリスがそう言おうと口を開けば、クリスタがびしっと指を指してくる。人を指さすのは行儀の悪いことだとわかっているが、アリスに指摘する元気はなかった。
「あぁ、もうっ! アリスはくよくよしすぎ! ネガティブだわ!」
クリスタがわざとらしく大きな声でそう言うから、自然と肩が跳ねてしまった。
そんなアリスを見つめて、クリスタはにんまりと唇の端を上げる。
「あなた、自分が思う以上に素晴らしい能力の持ち主だって、わかっているの?」
さも当然のようにクリスタがそう告げてくる。……素晴らしい能力の持ち主。
(それは、団長からも言われたけれど……)
パトリス曰く、アリスの魔力は割と特殊なものらしい。だからこそ、自分が無理強いをしてこちらに引き抜いたのだと、パトリスは言っていた。初めはそれを信じられなかったが、パトリスが嘘を言うとは思えない。そのため、信じるほかなかった。
「そう、それすなわち――あなたが選ばれる可能性も、十分あるということよ!」
胸を張ったクリスタが、そんな宣言をした。その様子を見て、アリスは身を縮めた。クリスタの言葉が信じられないわけじゃない。ただ、やっぱり恐れ多いと思ってしまうのだ。
「で、でも、私なんか……」
ゆるゆると首を横に振ってそう言うと、クリスタがずかずかとこちらに近づいてくる。そして、アリスの肩をぐっと掴んだ。
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