170人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
(あれ以来、ブレント様と会話はしていないけれど……)
どうしてか、自然と彼の姿を目で捜し、追うようになってしまった。彼を見かけると一日ハッピーで過ごせるし、逆もしかり。
そんな状態のアリスを、クリスタが面白がっているのは容易に想像が出来る。
「部隊長であるブレント様は、きっと合同任務に参加される」
「……そ、っか」
そう言われても、アリスがその合同任務に参加できるわけがない。だって、自分は所詮新米騎士なのだから。
「って、そんな気落ちした表情をしないの! 多分私の予想が正しかったら……」
「正しかったら?」
「一人だけ、新人も選ばれるはずよ、合同任務に!」
ぱちんとウィンクを飛ばして、クリスタが笑う。そのため、アリスは目を見開いた。
「え、でも……」
「社会経験っていうの? 今までの記録を調べてみたら、絶対に合同任務に新人が一人は突っ込まれているのよねぇ」
何処か遠くを見つめつつ、クリスタがそうぼやく。彼女の声は何処となく楽しそうであり、アリスは少し肩をすくめてしまった。
「だけど……。社会経験を積むのならば、私よりもいい人がたくさんいるわ。……だって、私……」
クリスタに対してこそ、こういう風に話せるようになった。だが、ほかの人と話す際はまだまだ挙動不審になってしまう。
そんなアリスが、重要な任務を任せる人物に選ばれるわけがない。
最初のコメントを投稿しよう!