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「いい? あなたには才能がある。合わせ、容姿も愛らしい。家柄だって、伯爵家なんでしょう?」
「……そ、それは」
「ブレント様と結婚できないわけじゃ、ないじゃない」
……侯爵家と伯爵家。身分的な問題で結婚できないわけではない、のだが。
(け、け、結婚!?)
その言葉に、自然と頬に熱が溜まった。顔から火が出そうなほどに、恥ずかしくてたまらない。
「わ、私、そういうつもりじゃあ……」
「じゃあ、ブレント様がほかの女性を娶ってもいいと思ってるの?」
「……うぅ」
それは、間違いなく嫌だ。ブレントの隣に自分じゃないほかの女性が並ぶなんて、想像しただけで胸が張り裂けそうなほどに辛い。
だけど、アリスにこの気持ちを伝える勇気はない。そもそも、ブレントだってアリスのことなどもう忘れてしまっているだろう。
「あのね、アリス。……幸せって、自分で引き寄せないといけないのよ」
「……クリスタ」
「あなたは確かに臆病で人見知りで、あがり症かもしれない。けれど、それ以上に魅力的なのよ」
まるで、小さな子供に言い聞かせるかのような言葉遣いだった。そう、まるで、姉が妹に言い聞かせるような――。
(……お姉様)
ふと、姉のことが頭の中に浮かんだ。アリスのことをずっと気にかけてくれて、豪快に笑い飛ばしてくれた姉。
……姉は、いつも言ってくれていた。
――アリスのことをわかってくれる人が、現れるわ、と。
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