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坂巻は、まったく変わってなかった。見た目は変わっていたけど、中身がまったく。
中学生になったらきっとくだらない小学生男子ノリが消えて、そうしたら坂巻がどんなふうになっているのか、なんてたまに淡い想いを馳せていたことをすごく後悔した。
いつからか、坂巻とは話が通じなくなった。
今はコンビニの店員と客なのに、相変わらずの不遜な態度だ。
小学校の頃は「不遜」なんて言葉知らなかったから、坂巻のことを「偉そう」だけど「男らしくてかっこいい」なんて勘違いしていたときもあった。
残念ながら、他の店内やレジの後続を気にする必要はなかった。
ギリギリ駅近っていえる距離の、住宅街の夕方のコンビニ。
レジ待ちの列どころか、店内には暇そうな立ち読みの男の人しかいない。
遠慮する人はいないにしても、坂巻とは会話は成立しないし、話していると嫌な気分にもなる。
そもそも驚いただけで、だからどうということはない。どうでもいい。
「じゃ」
私はあっさりそう告げて、商品をぽいぽいとカバンに入れて、一応頭を下げて、再びイヤホンを耳に入れようとしたところで、坂巻の言葉が追いかけてくる。
「ご、五月からバイトしてんだけど!」
驚いて足を止めた。
「お前、気づかなさすぎだろ。目、ついてんのかよ? やばくね?」
にやりと嫌な笑み。小学生の頃はなかった身長も今はプラスされて、蔑むように上から見下ろしてくる嫌な態度付き。
そもそも小学校の頃は何も感じなかったけれど、『お前』という二人称を親しくもない人に使われると今はすごく耳障りに感じた。
『お前』呼ばわりなんて、今の学校ではされたことはない。
人格を否定するような発言は悲しいかな私に免疫はあった。だから坂巻が言っても驚かない。けど、今はもしこんな物言いをする男子がクラスにいたら即、仲間内からたたかれるだろう。
パワハラとかモラハラとかジェンダーハラスメントとか、高校生でも知ってるくらい男子も女子も相手の人格を尊重して尊敬を持って接するのがグローバルスタンダードだ。
攻撃的な男らしさがかっこいいことみたいに、そんな価値観を振りかざす化石みたいな田舎者っぽさ。
久しぶりで、むしろ懐かしさに笑っちゃえたりさえする。
「久しぶりだねー。気づかなかったー。じゃ」
最後の「じゃ」に力を込めて。
イヤホンを耳に突っ込む。
坂巻がまだ何か言ってる気がしたが、今度こそ私は無視した。
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