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「ま、確かに買い物内容、知り合いに見られてると思うとなんかヤダよな」
「でしょ。地味に嫌」
「男? 女?」
「男子」
「あーでも男の方がマシかも。女子相手の方がめんどくさそう。まのんの買い物見て、マウント系かもしくはあれこれ詮索系」
いや、そこは男子女子関係なく、相手は坂巻。女子よりたぶんもっとめんどくさい。
私が買ってるものを見て何か思っても、スルーしてくれる人なら全然いい。
いちいち、口に出して、いちゃもんつけてくるだろうから。
「ま、俺なら行くのやめるな。どうしてもの時だけ利用して、メインコンビニを変える」
やっぱそうだよね。まあ、私もそのつもり。なんだけど。
「でも正直、家から近くて便利だから、行けないとなると不便ではある。バイト辞めてくれたりしないかなー」
「入ったばっかなの? その子」
「いや、それがもうすでに三、四か月は働いてるらしくて」
巧は肩をすくめた。
「それだけ続いてるんなら辞める可能性ないじゃん」
「……私も思う」
「まのん、『他人の変化を待つんじゃなくて自分が変わらなきゃ』だぜ!」
「……巧のくせにいいこと言ってるような気がする。巧のくせに」
冷たく細めた目で、巧を見た。
巧はチャラい。かっこいいけどチャラい。優しいけどチャラい。いいやつだけどチャラい。
「俺だっていいことくらい言うよ!?」
笑い合いながら、でも確かにそうだよなって思う。
君子危うきに近寄らずっていうか、自分で行動を変えれば簡単に解決する問題だ。避けられないことじゃない。
毎日のリズムを変えなきゃいけないのは少しストレスだけど。
中学でテニス部を引退したとき、いきなりぽっかり空いた放課後に毎日どうすればいいのって不安定になったけど、以外にもすぐ慣れた。今はむしろ放課後毎日部活とかやれる気がしないし、ちょっと前にハマって四六時中やってたスマホのゲームを、今はそのアプリを開くことさえない。
きっとコンビニに寄らない日常も、すぐにそれが新しい私の日常になる。
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