幽霊から来た手紙

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ヤスオへ  久しぶり。元気してたか。  この前は悪かった。あの時はむしゃくしゃしてて、つい勢いであんなこと書いちまった。ほんとごめんな。  あの後色々考えたんだけどさ。俺、旅に出ることにした。  もっと色んな場所を見に行くんだ。京都に沖縄。海を渡ってハワイなんかもいいな。  やっぱりさ、ここにいたら退屈だ。それに、世界にはきっと、俺の見たことも無いすごいものが、まだたくさんある。  この部屋にも、もう来ないつもり。万年筆は適当に処分しちゃっていいよ。売ればそこそこの値段になると思うし、その金で良いもんでも食ってこいよ。  今までの手紙も捨ててくれ。早く忘れたほうがいいぜ。それがお前のためだ。  じゃあな。ちゃんと生きてくれよ。 ジュンより ジュン  もうお前はこれを読むこともないんだろう。それでも、書かずにはいられない。  ふざけんな。  勝手に過去形にして、それでいいと思ってるのかよ。  お前はいつも本当のことを隠して、それで今までうまくやってきたんだろう。でも今回はそうはいかない。  自分が消えればすべて解決するとか思ってるなら大間違いだ。  でも、お前が決めたことだ。俺にはもうどうすることもできない。  せめて最後に、顔を見たかった。声を聞きたかった。叶わない願いだけどな。  俺はまだ待ってる。 万年筆はテーブルの上に、メモ用紙と一緒に置いてある。お前からの返事が来るまで、ずっとだ。  忘れるわけがない。忘れられるわけがない。  返事をくれ。どんなに先になってもいい。  待ってるからな。 ヤスオ
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