3 人知らずの森

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 この場所だけが、時間の流れから切り離されたような雰囲気を漂わせている。  伸びきった雑草。  荒れ放題の土地。  朽ちた家。  放置されたままの生活用品。  壊れた建具から家の中を覗くと、目立つのは散乱する子どもの遊び道具。  枯れた井戸の滑車が、風でキコキコ鳴り響く。  さらに梓織は村を通り抜け奥へと向かう。 「まさか、あの場所へ行くのか」  冬弥は躊躇して足を止める。だがそれは一瞬のこと、すぐに梓織の後に続いた。  木々の合間に潜むカラスが、じっとこちらを見下ろしている。  冬弥はごくりと喉を鳴らした。  胸の鼓動が速い。  緊張に息を詰める。  廃村からしばらく歩いた場所に、村人がもっとも恐れる呪いの社があるのだが……。 「これは……」  簡易だが、人が踏み込めないよう設置していた柵の一部が取り壊されていた。 「いったい、誰が壊したんだ」  冬弥は走って壊れた柵を越え、社に近づく。
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