15人が本棚に入れています
本棚に追加
「恋は、わかんねー!」
「はい、はい?」
「でも、いい後輩だと思ってるし。俺を選んでくれたなら、答えたいし、あと、今日はすごい楽しかった。また、デートしたい、とも思いました」
期待してた言葉ではないけど、意識させることには成功したらしい。ペンギンの件はよくわからないけど。
「だから、あー、恋愛的な好きではまだないけど、将来的にペンギン夫婦みたいに、なれたら嬉しいから、時々二人で出かけてみませんか」
私が「好きになってくれませんか」と問いかけた答えらしい。言い切ったと、胸を張ってメガネを空いてる手であげている。
あまりにも、先輩が可愛いからぎゅっと抱きつけば、きちんと手は背中に回って抱きしめ返される。
「こんな公の場でいちゃつくバカップルには、なりたくないんだけどな」
と呟いたのは聞こえてたからね、先輩。それでも、剥がされることはなく、抱きしめ返してくれてるのは、嬉しい。
「ドキドキもします?」
「する、よ、そりゃあ」
「じゃあ、今日はいいです! 先輩が恋愛でも好きだな、って思ったらちゅーしてください」
「はい?」
裏返った声に、くすくすと笑ってしまう。嬉しくて、どうしようもないくらい私は舞い上がってる。抱きしめていた腕を離して、先輩の右手を引っ張る。
「お土産にお揃いの、キーホルダー買いましょう! 忘れられないようにペンギンにしましょうね」
「いいよ」
買ったペンギンのお揃いのキーホルダーの写真を撮ろうとスマホを開いたら、カメラアプリじゃなくてカメラロールを開いていた。
最初に撮ったホッキョクグマとの記念写真に目が行く。一枚目の、なんとか先輩から目を逸らした写真。拡大してみれば、先輩も横目で私を見てる。
かぁあっと内蔵から熱が上がっていくのがわかった。
愛しくなって、後ろを歩く先輩を振り返る。私の後を付いてくる姿が、ペンギンと重なった。今度からメッセージの先輩の名前の後にペンギンマークを付けようと決めた。
これからの私たちの記念品は全部、ペンギンのものにしたい。だって、先輩がしどろもどろになりながら、「いつかペンギン夫婦みたいになれたらいいかな」なんて言ってくれたから。
<了>
最初のコメントを投稿しよう!