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カメラを構える先輩の背中を見た瞬間、体にビビッと刺激が走った。これが恋だ、って気づいたの。だから……
「先輩、好きになってくれませんか!」
カメラのお掃除をする先輩に打ち明ければ、ポカーンとした顔の先輩。あぁそんな顔も可愛いです。大好きです。愛しいです。
「好きになるのって、提案制だったの?」
メガネをかちゃりと中指であげる。先輩の照れた時の癖。私ずっと観察してたから知ってるんですよ。
ずいずいと近づけば、先輩は避けるように仰反る。
「っていうか、いつから好きだったの?」
「体験入部の時ですね」
「いや、それ四月でしょ、今何月だと思ってるの?」
「八月、夏休み入っちゃいましたね〜!」
写真部の部室、あらため、先輩のアトリエは大学の中でも一際木々が生い茂ってるところにある。札幌とはいえ、ここ最近の暑さは異常だ。窓を開けただけでは、涼しくならない。
「っていうかだよ」
「はい?」
「夏休みにこんなとこに来るの、お前だけだって」
お前、という響きが甘く聞こえてしまうのは先輩が好きだからだろうか。可愛い後輩ですよね、だって、毎日夏休みでもこうやって先輩に会いに来てるんですよ。
先輩はいつだって、ここにいる事を知ってるから。
住んでるんじゃないの? って噂が出るくらいには先輩はいつもアトリエで何かをしてる。カメラのお手入れだったり、イラストを描いていたり、パソコンいじってたり。
「じゃなくて、なんで急に?」
「それ、そんなに大切ですか?」
「いや、人生で今まで一度も告白なんてされた事ないから、後のために聞いておこうと思って」
カメラを先輩はついに机の上に置いて、開きっぱなしだったパソコンも閉じる。私の話を聞いてくれる気になったらしい。
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