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円山公園駅から地上に出れば、眩しい太陽が照りつけている。外に出るのを心が拒否するくらいには暑そうだ。
「じゃあ、デートなんで!」
手を差し出せば、地下鉄の中での説得が効いたのか、すんなり握り返される。私の胸が痛いくらい強く脈打つから、つい放してしまった。
「え、違った?」
「違くないです、けど、まさか本当に繋いでくれると思わなくて」
「恋はわからないけど、ちゃんと向き合わなくちゃなって思ったから」
先輩の頬が赤いのは、日差しのせいか。緊張のせいか。私には、判断できない。
緊張で、手汗ばかり出てきて、言葉がなかなか出ない。円山公園の中を通り抜ければ、木々のおかげか少しだけ涼しい気がする。顔は熱ってるけど。
「神宮とかは、デートの定番だと思うけど寄らなくていい?」
まさかの先輩からの提案に、これはもはや付き合ってくれるってことでは? と期待してしまう。でも、先輩体力無さそうだからなぁ。
「今回は、動物園だけ行きましょう。 動物園も歩きますから」
「そっか、そうだね」
円山動物園に入れば、シロクマのオブジェを見つけた。じぃっと見ていた私の視線に気づいたのか、先輩が手を引いて向かっていく。
「撮ろう!」
「え?」
急に積極的になった先輩に驚きながらも、ぶんぶんとうなずく。近くにいたお姉さんにお願いして、写真を撮ってもらう。
「はい、ホッキョクグマ〜!」
あ、シロクマだと思ってたけどホッキョクグマだった。そんなことはいいのに、緊張で余計なことばかり考えてしまう。
先輩をデートに連れ出してしまえば意識するだろうと思ったけど、私の心臓の方が持ちそうにない。ホッキョクグマの腕の下にしゃがみながら、隣に立つ先輩を見上げる。慌てて目線を逸らしたけど、カメラの音が聞こえた。やばい、見つめてたのがバレる!
「もう一枚撮りますよ、はいチーズ!」
次はなんとか、可愛い笑顔が作れたと思う。自分の中では、だけど。ドキドキしながらスマホを受け取れば、ちゃんと笑えてる。先輩も、笑ってる。
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