めざせ!ペンギン夫婦

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 手はもう繋いでくれないらしい。そっけなくなった先輩に、ちょっと辛い気持ちが湧いてきた。やばい、泣きそう。デートしてみて、やっぱ違ったな、って思い始めたんだきっと。  しょぼ、っとした気持ちで園内を回る。先輩は、動物を見ては感嘆のため息を漏らしていた。まぁ、先輩が楽しいならいっか。  これから、好きにさせる。させてみせる。  そう思いながら先輩の横をついて回る。手が触れそうになれば、ビクッとして先輩は手を引っ込める。 ――そんなに、いやになったの……?  好きにさせると決意したはいいものの、あまりにもそんなことが続くから、悲しい気持ちがフワンフワンと体を包み込んでいく。そのうちに、一周回ってしまったようだ。 「もう一回見たいところとか、ないですか?」 「ペンギン、かな」 「ペンギン、いいですね! 私も好きですよ、ペンギン」 「う、うん」  ペンギンの檻の前に向かえば、手がまたぶつかって、今度は握られた。びくって避けていたのがなんだったのか、と思うのに、体はどんどん熱くなっていく。  急にずるいよそんなの。  ペンギンの檻の前につけば、ペンギンたちは相変わらずおしりを振りながら泳いでいた。 「ペンギンって、離婚率低いんだって」  先輩が急に言い出したから、なんて答えればいいかわからない。 「そう、なんですね?」 「だから、ペンギン夫婦って一夫一妻で、えーっと」  何かを言いたいことは、わかる。そして、きっとそれは、私が期待してることだ。しどろもどろになってる先輩の言葉を待つように、見つめればやっと目が合った。
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