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おばあちゃんのお葬式の日。
棺におばあちゃんがいつも履いていたお気に入りの靴を入れようとしたら、周りで見ていたスタッフの人に止められてしまった。
靴は一緒に燃やしちゃいけないから、入れられないんだって。
天国でもいっぱい歩けるようにって。
いい考えだと思ったのに。
「ごめんね、おばあちゃん」
そっと話しかけると、おばあちゃんは今にも目を開いて私に答えてくれる気がした。
『向こうで買うからいいよ』
なんて、笑いながら。
もう動かないなんて嘘みたい。
歩くことが大好きで、一人で旅行に出掛けてしまうようなしっかり者のおばあちゃんのことだ。
お父さんとお母さんはいつも心配だと言っていたけど、私はそんなおばあちゃんが大好きだった。いいなって思ってた。
私がこんなことをしなくても、きっと向こうでも自分でなんとかするに違いない。
天国でも靴は売ってるのかな。
きっと、大丈夫。
だから、
「いってらっしゃい」
最後に棺が閉まるとき、私はおばあちゃんに手を振った。
いつもおばあちゃんが旅行に出掛けるときみたいに。
あとからあとから涙がにじんでくるけど、そんなのは見ないふりで、いつもみたいに。
おばあちゃんが、笑って「いってきます」って言えるように。
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