【第2花】ツタ

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 翌日が来ても、二人は相変わらず磔のままだった。  体内を循環する水や諸々が、胸に刺さった武器に伝わっていくのが分かる。  決していい気分では無いのだが、武器の状態は自分の命に直結する。  スズシロのスズナ自慢も底を尽きると、二人はいよいよ静かになった。 「洋服屋さん……」 「おっ、買ってく? お姉さんがお金出してあげるよ? 」  そんな二人を尻目に、ナズナとスズナは街で買い物を楽しんでいた。  当初はセリを心配していたナズナだったが、「あれが普通」なら気にすることはなかった。それより久々にたっぷり自由時間が取れたのだ。これを満喫しないのは余りにも勿体無い。 「でも買った所で、旅の途中で絶対破いちゃうんですよね」 「そうなのそうなの。この前お城のパーティーに呼ばれてね。慌ててドレス仕立てて貰ったんだけど、重いしここ以外でいつ着るのって感じだし、出る時に売り払っちゃったんだよね……買った時の半分にもならなかった」 「ですよね。私に買われる方が可哀想なので、別にいいです」  ナズナは背中に背負った大雀蜂(おおすずめばち)の針を握る。  蟲を狩って生活する蜂の針は、セリのナイフにも劣らぬ一品だった。 「武器」として造られたものではないので、取り回しにはやや難もあるが。 「持ち物は少ない方がいいですよ。旅をするなら身軽が一番」 「でもさナズナちゃん。あたし達にも、浮いた話のひとつくらいあってもいいなーって思わない? 偶にはちょっと着飾って、男でも引っ掛けたいなって」  それを聴いて、スズナは本能的に足を止めた。 「……えっ」 「あたし達の周りって碌な男いないでしょ。セリは喋らないし、ホトケノザは色々終わってるし。なんていうか、本能的に雄を欲しているって感じ? 」  ナズナは咄嗟に当たりを見渡した。  この話を聞かせてはいけない人物が、スズナの極めて近くにいると感じた。 「ねぇナズナちゃん。植物と人間ってうまくいくと思う? やっぱり価値観の違いとか、一緒に暮らしたらあるのかなぁ」 「ど、どうでしょう……」 「だよねぇ。終わったらスズシロにも聞いてみよ」 「絶対駄目です」 「なんでよ」 「スズナ姉さんの為です。絶対に言っちゃ駄目です」  植物同士でも分からないことってあるんだなぁ。  スズナはぼやきながらも話をそこで終えた。   「……一応。一応ですよ。植物と蟲がうまくやっていた例なら」 「おぉっ、それ教えてよ‼︎ だったら植物と人も……‼︎ 」 「ホトケノザさんとテトラさん」 「却下。論外」  昼を回ると、磔が終わる時間が見えてきた。  残された貴重な自由時間をどうしようか。  るんるんと話しながら、ナズナとスズナは再び街をぶらつくのだった。
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