【第2花】ツタ

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 そして夜が来た。  ナズナとスズナはツタヤシロの店に向かい、扉を叩いた。 「おぉ来たか。スズナとナズナだな」 「逆です。私がナズナで、髪が緑なのがスズナ姉さんです」 「あぁそうかい。あんたら名前がややこしくってな。もうちっと分かりやすく区別がつかないもんかねぇ。特にスズナなんてカブでいいだろ」  スズナは店の主人を叩き潰さん勢いで拳を振り上げたが、それを必死にナズナが止める。彼を攻撃してはいけない。ただそれだけの思いだった。 「そ、それより武器の方は……」 「もうすぐだ。そろそろ引っこ抜きに行く所だが、あんたらも見物するかね」  主人は二人の答えすら待たず、セリ達の所に向かった。  彼の提案を断る理由もなく、ナズナとスズナもついていく。大樹に磔になった相棒達を前に、二人は一切の悪気もなく、ちょっと笑ってしまった。 「どうだ面白ぇだろ。俺ぁこれを見るのが生き甲斐でな」 「終わったなら早く抜いてください。それとナズナさんはともかく、姉さんは笑わないでください。大事な妹の危機なんですよ。心配するのが筋でしょう」 「妹を心配する……? 」  未開の部族の風習を目撃したかのように不思議な顔をするスズナ。  まぁいいや、と投げられた話題を置いて、妹分の前に向かう。 「わーぐっさり刺さってる‼︎ スズシロ、これって痛いの? 」 「もう慣れましたが不快です。でも姉さんが来たので平気です」 「これって抜いたら色々出てくるの? 体液的なあれがどばーっと? 」  自分を慕う妹分が磔になっているというのに、刺さった槍を楽しそうに握るスズナ。「やりたきゃ抜いてもいいぞ」と言う主人と一種に盛り上がる。  そんなちょっとネジの外れた二人を横に、ナズナはセリに声を掛けた。 「元気ですか。セリ」 「……問題ない」 「楽しかったですよ。色々なお店回って、美味しいもの食べて」 「……」  セリが渋い顔をしたのを見て、ナズナはくすっと微笑んだ。 「後で一緒に行きましょうね」 「……そう思うなら抜け」  ぶっきらぼうだが、どこか優しい返事だった。   ナズナはセリの胸に刺さったナイフを強く握ると、目一杯の力で引き抜く。 「……っっっ⁉︎ 」 「おいおい嬢ちゃん⁉︎ そんなに力入れて抜いたら痛ぇだろうがっ‼︎ これは優しくそぉっと抜くもんなんだよ。あぁほら、体液が洪水じゃねぇかっ⁉︎ 」 「えぇっ⁉︎ ど、どうするんですこれ⁉︎ 栓すればいいんですかっ⁉︎ 」 「っっっっ‼︎‼︎」 「だぁぁだからってもう一回刺すな‼︎ いいからそこどけっ‼︎ 」 「ははははいっ‼︎ 」  あたふたと数回ナイフを抜き差しした後。  セリは息も絶え絶えの状態で解放された。  スズシロはけろっとして解放され、新調された槍を優雅に振っていた。 「どこで差がついたんでしょう」 「ナズナちゃんが意外とぽんこつだったってことかなぁ」 「〜〜〜〜〜っ‼︎ 」  セリはげっそりしながら。  ナズナは顔を真っ赤にしながら、しょんぼりと立ち竦んでいた。
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