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泣きそうだったのは、二人から責められたことではなくて、奥村が亜由美のことを理解してくれていることだ。
こういう先輩になりたいと亜由美は強く思った。
午前中、亜由美は何とか仕事をこなしたものの、誰かとお昼に行く気にはなれなくて、少し時間を外して、外へランチに出ることにする。
会社の入っているビルを出ると、やっと息が出来るような気がした。
やはり気分転換は大事だ。
亜由美の塞ぐような気持ちとはうらはらに、外は気持ちの良い青空だった。その爽やかさに少し気分も晴れたように思う。
せめてランチくらい今日は奮発しようと亜由美は近くのビルに向かった。
「杉原!」
突然、名前を呼ばれて振り返ると一条がいて、亜由美に向かってつかつかと歩いてきたのだ。
怖くて、一瞬で血の気が引くような気持ちになった。
「な……なんですか?」
一条は亜由美の目の前まで歩いてきて、立ちふさがる。
「お前、何で俺のことばっかり目の敵にするわけ? それで気を引いているつもりかよ?」
気を引いている? 何を言っているのだろうか。
「気なんか引いてませんけど」
バッグを肩から下げて、オフィスカジュアルの亜由美を上から下まで見た一条が口を開く。
そして、軽く笑った。
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