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一条は鷹條の正体を知らないから、そう返す。その一条に向かって鷹條は亜由美を腕に抱いたまま、きっぱりと伝えた。
「知り合いでも暴行は成立するぞ」
「暴行?」
急にそんな言葉が出てきて、一条は眉を顰める。
「襟元を掴んだだけでも暴行罪は成立する。俺も証言する」
(──どうしよう?)
とんでもない状況なのに、すごくすごく嬉しい。
もう、会えないと思っていた。雲の上の人なんだと。
なのに、こんな風に偶然に出会ってしまったばかりか、鷹條がまた亜由美を護ってくれている。
「僕も証言しますよ?」
そう横から言ったのは、鷹條よりも背の高い、身体つきのがっしりとした男性だった。
その男性はにこりと笑い、懐から身分証を出す。いわゆる警察手帳だ。
「こういう者なんですけどね? これを提示するってことは必要があると判断した時です」
亜由美も初めて見た。一条は警察手帳を目にして完全に怯んでいる。
がっしりとした男性はにこにこしながら、言葉を続けた。
「職務の執行の際は提示することになっています。つまりあなたを今、現行犯で逮捕しましょうかってことです」
「そんなことしてもいいと思ってるのか?」
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