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泣きそうな声で訴えてくる香山に、龍樹は分かったと答える。そう答えるしかない。
「よかったー。とにかく早く来てください。お願いします!」
電話の向こうで、香山がほっと息をついたのが聞こえた。
「俺が行くまでに、高田を落ち着かせろ」
「頑張ってみます」
とはいうものの、香山のことだ。期待はできそうにもない。
「日野の写真はどうした? まだ持っているのか?」
写真は消したと言ったのは、嘘だったのか。
「分からないです……」
思わず舌打ちがもれた。
「だったら、これ以上被害を広げないよう、日野からスマホを取りあげろ」
「や、やってみます」
電話を切った龍樹は、沈痛な面持ちで眉間にしわを寄せる。
もしかしたら呪いから解放されるかもしれない、と思っていたところだったのにこれだ。
関わりたくないが、行かないわけにはいかない。
「龍樹?」
狭霧が不安そうな顔でこちらを見る。
話の内容から察しがついたらしく、顔を青ざめさせていた。
「面倒なことが起きた。今から部室に行く」
「まさか……」
「ああ、そのまさかと思いたいが……とにかく、行ってみないことには詳しい状況は分からない。が、どうやら日野が高田にあの写真を送ったらしい」
「日野さん、写真は消したって電話で言ってたよね。完全に消えたと」
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