ひらり、とびこえて

12/14
前へ
/14ページ
次へ
イタリア旅行出発の日。 失恋でグズグズ泣いてばかりの毎日だったけど 出発日のあたりになると 初めての海外旅行とあって ノー天気な私はかなりワクワクしていた。 「行ってきま〜す」 キャリーバッグを引きながら 玄関のドアを開け ふと振り返った時に 見送りに立っていた母の後ろに 父の姿があった。 普段は見送りに出てきたことなんてないのに。 ほんの一瞬、父は私を見て そしてうつむいて 顔を2度と上げなかった。 私を見た父の寂しそうな瞳は 駅に向かって歩いていても 電車に乗っていても 空港ロビーで搭乗を待っている間も いつまでも私の心から消えなかった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加