ひらり、とびこえて

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「うん… そうだね、湊は男の子だし 一人旅くらいできなきゃね」 コラ〜!私〜! なに言っとんじゃ! 逆だろ、逆。 言ってることと思っていることが逆さま! 「なんかこの夏休み 今までしたことない何かをしたいな〜って 思っててさ。 友達に青春18きっぷのこと聞いて あ、これかなって」 「……」 「それ使って 行けるとこまで行ってみようって思って。 この切符とGoogleマップさえあれば どこにでも行けると思うんだ」 「……」 …私は物分かりのいい母親だ。 旦那にはどうあれ 湊にはそういうことになってる。 自由にいつでも扉は開けて 風通しの良い、何でも話せる気軽なお母さん。 そういう母親像を貫いているから 今時珍しく 湊は思春期に入った今でも 何でも私に話してくれる。 だから 家庭円満、息子との関係も良好 このスタイルをなんとしても保ちたい。 …いや だけど心配だ…心配過ぎる。 道中、事故に遭ったらどうする? 電車に乗ってても事故は起きる。 宿泊先が火事になったら? 歩いていて熱中症になったら? 道に迷ったら? お金落としたら? 美少年好きなヘンなオヤジが 大浴場で一緒になったらどうする? あ〜 湊が一人旅なんかしたら 私はきっと眠れない、食べられない、仕事が手につかない。
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