ひらり、とびこえて

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「お母さん、これ書いて」 夏休みにあと数週間で突入しようとしてたある夜 夕食の支度をしていると 中学生の一人息子・湊(みなと)が 私の鼻先に紙を一枚、ぺランと差し出した。 「ん?」 流れっぱなしになっていた水道のレバーを下げ 水を止めた。 手を拭いて 鼻先にある紙を湊の手から取り上げる。 「何これ?同意書?」 上の方に「同意書」と太文字で書かれ 氏名や住所・印・電話番号 用途などを記入するようになっている。 いかにもネットからテンプレを見つけ出し コピーしたと言う感じだ。 その「同意書」たるものをピランピランさせながら 「なにこれ、何に使うの?」 「夏休みに旅行しようと思って」 「ああ 静岡のおばあちゃんちね」 そういえばコロナやらで ここ数年、静岡の実家に帰ってない。 「いや、一人旅しようと思って」
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