映える店の作り方

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「いらっしゃいませ。何名様ですか?」  ドラキュラの恰好をした店員が、ドアを開ける。 「四人なんっすけど。」  赤ジャンが答える。 「こちらへどうぞ。」  店員は品よく奥のボックス席に通すと、ごゆっくりどうぞ、と言ってその場を離れた。店のなかはレンガ造りの壁で、あちこちにかぼちゃが飾られている。  窓には格子模様の色ガラスがはめられていて、頭上のあちこちに張り巡らされた止まり木には、本物そっくりのカラスや蝙蝠が止まっている。 逆に明らかに偽物とわかる蜘蛛の巣もそこここにあって、ユーモラスな黒いクモが垂れ下がっていたりする。 暖炉の火は赤赤と燃え、ピザ窯から熱々のピザが出てくるのも見える。 「すげー! あの店員、本物みてー!」  黄ジャンが声を潜めて言う。 「見ろよ、メニューも映えるやつばっかだぜ? 血の海に浮かんだハンバーグ ドラキュラ風とか、地獄の底の真っ黒なドリアとか。来てよかったなあ。」  青ジャンも浮かれている。 「だろ? SNSで写真上がりまくってるもんよ。一回は来なきゃと思ってたんだ。」  赤ジャンが言う。 「思ったほど怖くなくてよかった。」  緑ジャンが言う。 「すいません!」  赤ジャンが店員を呼ぶ。 「注文いいですか? ドラキュラ畑の葡萄ジュース四つと、それから―――」  四人は次々に注文をする。  本物のドラキュラと三億年草の切り盛りする『ドラキュラのかまど』は、今夜も満員御礼のようだ。 〈おしまい〉
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