映える店の作り方

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 三億年草という花をご存じだろうか。  苺のような可愛らしい赤の花弁の花だが、その愛らしさに反してたくましく、その名の通り、三億年咲き続ける。正確に言えば、夜には一度花を閉じ、朝になるとつぼみをまた開く。  たおやかに、永遠に生き続けるかのように、つぼみを開く。  三億年草のような女性を見つけるのは、私のような者にとって悲願と言っていい。永遠に生き続け、永遠に愛らしく、永遠に栄養を提供してくれる。  そんな女性に、ついに私は出会ったのだ。これに勝る幸福はない。  三百年の眠りから覚めて、立てかけてある棺桶から出てみると、そこは柔らかいイエローで統一された、子供部屋のようなところだった。日中のようだが、遮光カーテンが閉められているため、陽の光は漏れてこない。 棺桶のすぐ近くに、シングルの大人用のベッドがあって、赤ちゃんのためのベッドがその隣に置いてある。 赤ちゃんのベッドには、天井からモビールのようなものが吊る下がっていて、その下に赤ん坊がいるようだった。  生まれてきたばかりで申し訳ないが、私はお腹が空いているのだ。なにせ三百年もなにも口にしていなかったのだから。  私が長い爪を鳴らしながら近づいていくと、その赤ん坊はとてもたおやかに笑顔を見せた。  こ、こんな私にも、この子は笑顔をくれるのか? その愛らしさに一瞬狼狽するも、私は目的を思い出した。
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