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バンパイアが血を吸えるのは、女からだけだ。可愛い赤ん坊だが、そこのところはしっかりせねば。
私にはこの子が女の子かどうか、服を脱がせ、おむつを取る必要があった。ああ、長くて鋭い爪が邪魔して、うまく服が脱がせられない。幼い肌を傷つけてしまっては、あまりにかわいそうだ。その間にも、赤ん坊はキャッキャと笑っている。
私が苦戦していると、不意に声をかけられた。
「あれ。おむつ濡れてた?」
女は軽やかで明るい声の持ち主だった。明るい色に染められた髪は潤って、襟の上くらいでカールしている。正統派の美人とはちょっと言えないが、離れ気味の大きな目はアーモンドみたいで、なにより透き通るような白い肌と、上気したバラ色の頬が魅力的だった。
そして彼女は、この部屋に見知らぬ男がいることも、その男が銀髪に赤い瞳で、黒いマントをつけ、長い爪をしていることも、あっさりと受け入れているように見えた。
女はおむつをチェックして
「まだだいじょうぶみたい。ありがとう。」
と言って、私の目を見てほほ笑んだ。
私はたまらなくなって、女の手を掴んだ。そのままベッドに連れて行くと、乱暴に押し倒す。
「申し訳ないが、犠牲になってくれ。だいじょうぶだ。苦しみは一瞬で終わる。」
女に馬乗りになり、その細い首元にがっつりと歯を立てた。女の血は、甘くみずみずしく飲んだことがないほど、美味だった。
驚いた顔をしていた女は、静かに瞳を閉じたようだった。我々の生があり、彼女らの死がある。そのことを深く噛みしめ、吸えるだけの血を吸った。
可愛らしい女だった。もっと話を聞きたかった。女の顔に手をやると、残ったぬくもりが悲しかった。何遍やっても慣れない。私は涙を流していた。
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