映える店の作り方

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 と、 「エクスタシー!」  と言って、女がぱっちり目を開けた。なにが起こったのか、私にはわからなかった。 「すごくいい! ちょう気持ちよかったあ。も一回やって!」  女はたったいま血を吸ったばかりの吸血鬼のように、生命力にみなぎっている。 「『ちょう気持ちいい』?」  私は聞き返した。長年バンパイアをやっているが、こんなポジティブな感想は初めてだ。うんうん、と彼女は首を縦に振った。そして私の耳にそっと 「旦那とのセックスよりいい。」  とささやいたのだった。  ここで初めて、私は気が付いた。彼女はきっと、三億年草だ。いくら血を吸っても枯れることなく、若く美しくありつづける。私のためにあると言ってもいいぐらいの女性だ。  子持ちの彼女、ほんとうに三億年草であるならば、彼女はいったい何歳なんだ、という疑問がわく。その疑問を、頭の上で手を振って追い出す。重要なのはそこではないのだ。  彼女は三億年草のような女性で、私にとって理想のパートナーと言っていい―――あー!! 結婚してるじゃん! しちゃってるじゃん! てことは、私のパートナーにするのは無理、ってことで……ううん、この際、間男でいい! 二番目の男で、私いいの!  なんて忙しく考えている私を、彼女は楽しそうに見ていた。ああ、可愛い! 食べちゃいたい! さっき食べたところだけど。
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