映える店の作り方

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 二階にあるキッチンで、綺麗に小分けにして冷凍した米をチンして、ひなたは料理を作っていく。キッチンはきちんと整えられているし、料理の手際もいい。ひなたは性格も明るいし、きっといい奥さんなんだろう。  そう思ったら嫉妬心が湧いて、こちらに向けられている首筋に、後ろから乱暴に嚙みつきたくなった。  いやいやいや。だめだだめだ。ひなたは私のために、料理を作ってくれているのだ。それに、いくら三億年草の女性を見つけたからといって、このひとは人妻なのだ。  理性に反して、後ろから彼女の首筋に近づいて行ってしまう。もう一息といったところで 「臭い。」  と、ひなたが言う。くるっと振り返ると、近すぎる距離で 「ドラちゃん、最後にいつお風呂に入った?」  と詰め寄られた。 「い、いつ、と言われ申しても……。」  思い出せる限り、お風呂にもシャワーにも、入った覚えがない。 「えー! 汚いー。」  ああ、ひなたに汚い、臭いと言われることほどつらいことはない。 「す、すぐにシャワー浴びて来よう!」  この家のどこかにあるバスルームに駆け出しそうになると 「あ。オムライスできちゃう。食べてからにしたら?」  と言われた。  ひなたはお皿に乗せたオムライスに、ケチャップで大きくハートを書く。え、愛の告白?! いやいやいや。ただの記号だ、気にするな。ひなたはテーブルの上にオムライスとお冷を置くと 「さ。召し上がれ。お口に合うかわかりませんけど。」  とほほ笑んだ。  お口に合うに決まっているとも! ひなたの愛情のたっぷり込められたオムライスなのだから。一口頬張る。固めの卵のオーソドックスなオムライスは、感激するほど美味しかった。さすが、飲食店をやっているだけある。 「あー美味しかったあ。」  あっという間に完食。目をつぶり、余韻に浸る。 「よかった。」  ひなたは微笑む。
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