青春してんな、私

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 高校に入学したての時は、絶対に卒業式では泣かないだろうなと思っていた。コロナ禍になって、めちゃくちゃ思い出潰されて、何も思い入れのない高校を卒業したって泣かないだろうなって。それなのに、私の視界はぼやけていた。人の形も歪んで見える。それが「涙」であると分かった時、私の目からはさらに涙が溢れだした。  卒業生全員での校歌斉唱。視界が歪んでいても、耳から入る音で周りも泣いていることが分かった。皆、鼻を啜りながら鼻声で歌っている。私も同じだった。  高校生になって、憧れのJKライフを過ごせると思っていた。新しい環境、可愛い制服、新しい友達。勉強も、部活も、恋も全部頑張るんだと意気込んでいた。  カッコいい人と恋人同士になって、クリスマスを一緒に過ごしたり。友達と一緒に放課後ファミレスに行ったり。テスト前は誰かの家に集まって勉強会をしたり。大会で勝つ為に仲間と一緒に部活を頑張ったり、大会後は打ち上げしたり。そんな生活を想像していた。  でも丁度同じ時期にコロナ禍になって、私が憧れていた生活とはかけ離れた生活になってしまった。  常にマスクを着用し、学校は休校になってオンライン授業。新しい友達を作る機会は奪われて、部活もできなかった。文化祭も体育祭も何もかもが中止で、修学旅行も中止。私が想像してた世界と現実は大きくかけ離れていた。何ひとつ思い出なんて無かった。  じゃあ、私はどうして泣いているんだろう。何で思い出なんて何ひとつないのに、卒業式で泣いているんだろう。  そこでようやく気づいた。確かに私が思い描いていた「青春」はできなかった。でも私が過ごした日常は「青春」だった。立派な青春。青春してんな、私。校歌を歌いながら、心の中でそう呟く。青春してたわ、私。
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