青春してんな、私

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 休校が明けて友だちができた。その友達と遊んだ。テストで悪い点を取らないために、勉強も頑張った。途中からだけど部活もできるようになった。大会は何度か中止になったし打ち上げもできなかったけど、それでも仲間と一緒に活動できた。  好きな人ができた。振り向いてもらうために一生懸命頑張って、校則を破らない程度にマスクをつけても可愛く見えるように工夫をしたりもした。友達と恋バナもした。好きな人と隣の席になって沢山話すことができた。たまに電話をしたりもした。それで、付き合うこともできた。  思い返してみれば、思い出だらけだった。色んな制限はあったけど、その制限の中で沢山の思い出を作ることができた。入学したばかりの頃は絶対に泣かないって思っていたのに。卒業しても母校に行こうとは思わないだろうなと思っていたのに。どうやら卒業するのが嫌なくらい思い出だらけだったようだ。気づかぬうちに思い出がどんどん増えていた。ほんの些細な日常も、全て思い出に変わっていた。  校歌斉唱が終わる。皆、着席する。  袖で涙を拭う人もいれば、両手で顔を覆う人もいた。涙を流し続ける人、周りが泣いているのを見て引いている人、特に何とも思っていない人。色んな人がいた。この同級生たちと、今日私は卒業する。この思い出がつまった高校から新たな世界に旅立つのだ。  今日マスカラつけてなくて良かった。つけてたら今頃、涙のせいでパンダになっていたところだった。こんな大事な時にそんな酷い顔になってたらと思うと肝が冷えた。斜め前に座る友達と目が合う。向こうもメイクが落ちるくらい泣いていた。せっかくのラメも流れてしまっている。  私たちはお互い見つめ合うと、はにかんだ。この3年間、忘れることのない青春の日々を送ることができた。  うん、決めた。卒業してもまたここに来よう。思い出でいっぱいの大好きなここに行こう、絶対に。
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