ピリオド 2

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 響は蒼井の太い首にしがみつき、肩に顔を埋めた。  片足を高く持ち上げられた格好で、ずんずんと身体を突き上げられる。  スラックスと下着を残したもう片方の足は革靴が脱げ落ち、つま先さえ床に届かず、まったく力が入らなかった。  逞しい背中、分厚い胸板、小柄とはいえ大人の男を軽々と抱える太い腕ーーーーーーすべてが敵わない。おれじゃ、どう頑張ってもこんな身体になれない。  響は意地になり、蒼井の肩に噛みついた。 「いてっ、痛いって!」 「……こっちだって、背中、痛いんだぞ!」  壁に押しつけられた背中は、上下に揺すられるたび、擦れてひりひりした。  蒼井は「ごめん」と素直に謝り、尻を掴んでいたほうの手を背中へ回した。  大きくて肉厚な手が、優しく背中を撫でる。  響はきゅんと胸が熱くなって、いっそう強く抱きついた。 「壮平……」 「気持ちいいのか、もっとしてほしい?」 「聞くな……」  響の手で口を塞がれた蒼井は、もごもごとなにか言った。 「⋯⋯なに?」 「おれ、もう⋯⋯今日はこのまま、なかでいい?」 「だめ。すぐ帰るんだから」 「泊まればいいだろ、明日は日曜日じゃないか」 「仕事があるんだよ」 「働きすぎだよ。ベッドに行く時間もないなんてさ」 「こんなところでスイッチが入ったのは、きみのくせに」 「おまえが時間ないって言うから⋯⋯そういやさ、昔、ガキに見られたことあったよな」 「そんなことあったっけ?」 「おまえの、甥っ子だよ、確か⋯⋯高校のときだ」 「ああ⋯⋯」 「あの子、おまえのこと好きだったんだぜ。おれの響にいちゃんから離れろってすごい剣幕でさ」 「ああもう、ばか、こんなときに、昔話なんかするなよ⋯⋯」  響は蒼井を黙らせようと、唇を重ねた。 「ん⋯⋯響⋯⋯」  受け身が常の響にはめずらしい積極的なキスだった。吐息を漏らしながら懸命に舌を吸うのを「かわいい」と思った瞬間、蒼井は堪えていたものを抑えきれず、ぶるっと身を震わせた。  思わず、愛おしい身体を離すまいときつく抱きしめ、腰を突き上げる。 「⋯⋯もう、ばか、きらい」  涙声で言いながら、響も身体が跳ねるのを抑えられない。  蒼井は響の身体を抱いたまま、ぐったりしたかれの頭を撫でた。
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