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「響⋯⋯」
低い声が、何度も呼ぶ。
その切ない呼びかけを聞くたび、おれはここにいるのに、と響は思う。
燃えるような熱をもって体内の奥深くを穿ちながらも、どこか不安気な恋人の声。
響は聞こえないふりをして、やり過ごす。
「⋯⋯あ、そこっ⋯⋯」
大きな声が出そうになって、響はワイシャツの袖を噛んだ。同じところばかり噛むから、唾液が染みてじっとり濡れている。
白い肌は紅潮し、汗ばんでいた。
癖のある柔らかな黒髪が頬に張りついている。
「んっ⋯⋯蒼井先輩⋯⋯」
自分自身よりもこの身体を知り尽くした恋人に身を委ねる安心感。
響は、絶えず注ぎこまれる甘い刺激に酔いしれていたーーーーーー
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