シンクロニシティ

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人体実験? 中学生以外の大人たちの脳裏には同じ言葉が浮かび、絶望感が漂った。 その様子を監視カメラで確認した誘拐犯は、満足げに微笑んで 『今日はゆっくりお休みください。18時に夕食をお運びし、その後男女で一部屋ずつご案内いたします。ではまた』 「実験ってどんなことするんですかっ?」 牧田が純粋な好奇心で質問を投げた。 『あすになればわかります。おやすみなさい』 プツっと映像が消えた。 「あんたたちってさ、危機感ゼロよね」 サネ子姐さんが呆れ気味に言う。 「やっぱりこの状況、危ないんですか?」 「ちょっとワクワクしてるとか言ったらまずいですか?」 「…なんなんだろうね。危ない目にあったことないから鈍いのか、それとも、危なくないって雰囲気を察知してんのか」 「若者には我々大人が思う危ないことは危なくないんですよ。私も青春時代を思い返すと命知らずだったなと背筋が寒くなる体験があります」 サラリーマン風男性が見た目に似合わない告白をする。 他の参加者を見渡してサネ子が提案した。 「こんなことになっちゃったけど、これも縁。皆さんのお話聞かせてください。他にすることもないし」 「あ、それいい!」 「メルローズTVは、いつから見てましたか?」 「それ聞きたい!あれっていつからやってる番組なのかな」 「私は、一年前からですね」 サラリーマン風の中年、アカシが眼鏡を直しながら答えた。 「へー、あたし三ヶ月前からだ。いいなー」 「実は、私が初めて見たのが初回だったようなんですよ」 「うそーーーー!!すごいっ!」 「…えへへ」 中学生の女の子にすごいと言われて頬を赤らめるアカシ。 「初回ってどんなでしたー?」 「つまんなかったですよ。って言ってもやってることはずっと変わってないんですけど、つまんない番組だなって思ったのに、また見たくなって」 「わかる!」 「えと、隣のおにいさんは?」 「おれはカスヤ。夜中はテレビつけっぱなしにしてるほうで、いつもあの番組をちゃんと見たことはなかったよ。でもさ、イベント告知の時?真っ最中だったんだけど、」 「え何の?」 「なんか知んないけど、上に乗ってた女押しのけて、集合場所必死でメモっちゃってさ、昨日もバイトの面接あったんだけどばっくれてここ来ちゃったよ」 「この人よーちゅーいだね」「やばいね」 二人の女子中学生は顔を近づけてコソコソ告げ合った。 「じゃ次は…そこの綺麗なお姉さん」 「仕事から帰ってきて…テレビつけたらその番組が映って」 「お姉さん、仕事は今日大丈夫なの?」 「もう辞めるからいいの。ここ来る時もちゃんと置手紙してきたから大丈夫だと思う」 「あ!メルローズTVの専属になったら?そしたら視聴率上がるかも」 「視聴率が上がって何かいいことあるの?誰も見てないところがいいのに」 「そうね。どうせこんなの、あの社長の道楽でやってるだけなんだから儲けとか度外視だし」 「そう言うおねいさんは、どうしてメルローズTVのファンに?社長と知り合いだから?」 「知り合いってか、顔見知り…ってか、中学の先輩だっただけで、あっちはあたしのこと知らないと思う。たまたまよ。たまたま見て、どんな人がこんなくだらない番組のイベントにまでやってくるのか興味があっただけ」 「そちらのかたは」 見かけからは何も判断がつかないような何もかもが薄い印象の男はヤマダと名乗った。 「おれは実は、イベント告知で初めて見たんだ。家はこっちじゃなくて、多分放送がない地域。あの日は知り合いのところに泊ってて偶然、ね」 「そういう人もいるんだー。そのお知り合いがメルローズTVいつも見てたんですかね」 「いや、なんか、テレビのリモコン踏んづけてたかなんかしてたらしくて、チャンネルが動くからなんだろうと思って足どけたら止まったところがあのチャンネルで、あの画面で、って感じ」 「すごい!なんか運命を感じますね!」 「…そぅだね」 ヤマダと女子中学生ズのテンションの差。 「あんたたち友達なの?」 サネ子が女子中学生ズに尋ねた。 「同じクラスです」 「友達なの?」 「しゃべったことなかったですけどぉ」 「じゃ別々に来たんだ。制服で」 「だって昨日は終業式だったんですよ。学校行くふりして、家出てきたんです」 牧田は後ろめたそうに言ったがそれを聞いて瀬戸が 「えっ、まさか親に黙って来たの?学校には休むって電話した?あたししたよ?」 「…してない」 「えーーーっ!真面目な牧田さんが無断欠席とか、騒ぎになってないかなー」 「てゆーより、今頃親が騒いでるだろうね。娘が帰ってこなかったつって」 「あそーだ!」「そーだった」 「すみませーん!!家に電話だけさせてくださーーーーい!!」 瀬戸がどこにいるかわからない相手に呼び掛ける。 サネ子が中学生の能天気さに溜息をついたとき、大型ディスプレイにあの男が映った。 『家に電話して、何を言うんですか?』
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