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クラスメート
ローファーを懐かしい上履きに履き替え、三階建ての校舎の二階の教室に向かう。すれ違う際にたまに視線を感じるのは、事件が学年で知れているせいなのだろう。
また学校か…見るからに荒れてる高校ではないし、普通の高校みたいだけど
「明日も案内するし、クラスの奴も紹介するから、心配するなよ」
「うん、ありがとう。B組だからここかな」
ドヤ顔で肩を軽くたたく。スキンシップ多めなのは、親しかったからなのだろうが、まだ慣れない。親分肌なのは助かるが。
「そ。おはよー」
「おはよ、おぉ?眞山じゃね」
「マジだ~」
「あ、おはよう」
「記憶どんくらいないの?」
「えぇと、日常生活は大丈夫だけど、人の名前と顔は忘れてて、、後は勉強もちょっと…忘れてる」
人に囲まれた
めんどくさいけど、どうせだから勉強もやや忘れたことにして盛っておこう
覚えてないし
動物園のパンダの気分を味わいながらひきつった笑いを浮かべクラスメートに答えていると、海斗がボディーガードよろしく手を振って道を作った。
「ダメですよぉ!まだ音は疲れやすいんだからな。退いた退いた」
「えーっ」
「でもさぁ」
クラスメートを振り切り、手首を引かれる。教室の中程の位置の窓側に案内される。海斗は斜め前の位置に腰かけた。
「席は、そこ。前は五十嵐 空良」
「おっはよ。五十嵐です」
前の席の五十嵐と呼ばれた彼が挨拶する。人懐っこい笑顔だ。
「隣が高遠、お前、名前なんだっけ?」
「慎之介、高遠でいい」
隣にいた高遠が無愛想に返答する。可愛い系の五十嵐とクール系の高遠は好対照だ。薄ら笑いで会釈しつつ脳内にインプットする。
茶髪で前髪が多いのが安斉で、マッシュルームが五十嵐、黒髪センターパーツ分けが高遠、ですかね
「あれが、担任の川村で、教師は(後で教える)」
「うん」
担任がホームルームを始め、その後も授業が続いたため、休憩に少し彼らと話した以外は時間割り通りに時間が流れていった。
つ、疲れた
一人になりたい
学校生活ってこんなに疲れるのか
「トイレわかるか?」
「あ、大丈夫」
安斉の横をすり抜け、トイレの個室へ小走りになると人にぶつかりそうになった。
「うわっ!すいません」
「退院おめでとう」
「?ありがとうございます一一痛っ!」
教師と思われる制服ではない男に退院を祝われ、返答すると強く握手される。
「すまない。そうだったね、記憶が無いのか。私は美術教師の木嶋です。ではまた」
「はい。失礼します」
振り返ると目がまた合う。真顔のままの彼はどこか不気味だった。
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