帰宅部

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帰宅部

授業が終わったが、校舎の場所を案内してもらっていた安斉と五十嵐は放課後部活があるとの事で、高遠に連れられ寮に向かう。取っ付きにくいイメージの高遠だが足並みを合わせて歩いてくれているので、悪い人間では無いと思われた。 男子校って当たり前だけど、男子しかいないな 「安斉はバスケ部、五十嵐は軽音部なんだ」 眼鏡をかけ直して辺りを見回していると、高遠が話しかけてきた。 「そうなんだ」 会話が途切れ、黙ったまま歩く。 「寮では俺は眞山の隣の部屋だから、何かあれば来てくれて構わないから」 「ありがと。いやぁ、実は記憶が無いから色々心配だったんだ。でも、皆いい奴だな」 笑顔を見せると、高遠も口元で微笑む。安斉や五十嵐に比べて静かだが、好きなタイプだ。 妙に落ち着く まぁ、実際こいつらより年上だから うるさいのはどうしても苦手意識ある そういえば、酒がのめないのか・・・ ひと月とはいえ辛い 寮に辿り着くと、思ったよりも小綺麗で安心する。古びていて、幽霊でも出そうな建物なら眠れるか心配だったのだ。 「鍵は持ってると思うけど、一応食事は午前七時~午後九時まで、風呂も午後九時まで済ませて、後は消灯は十一時。何か質問はあるか?」 白木で統一された部屋を眺めていたが、ベッドが二つある事が気になり尋ねる。 「同室は誰?」 「あぁ、安斉だ。特に気にせず個人で動いていい」 「了解。ありがとな。高遠は部活は?」 「俺は一一故障して、それからは帰宅部だ」 「あ、そうか。えーと、そのうち遊びに行くから」 「おぅ、じゃ」 失言したのがわかったが、謝るのは余計に話が終わらなくなると思ったため、さらりと流しておいた。遊びに行くかもわからないが、とりあえずは夕方に風呂、飯に行く必要があるため、少しスマホで報告をするために、メモをして頭を整理する。 仲が良さそうな相手は、安斉・五十嵐・高遠 後は話しかけて来たのは、美術教師の木嶋か…担任は型通りの挨拶のみなのは、優等生ではないから、か 「さぁてと、原野に報・連・相ね」 スマホで連絡したが、まだ原野は報告を呼んでいない。一体この潜入捜査は役に立つのかわからない、要するに本人が完全体でこの学校に復帰するための場つなぎなのでは、と考えられる。 「うぅ、眠い。疲れた」 ペットボトルの茶を飲み干してから、ベッドに横になって伸びをした。
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