2ー⑶

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2ー⑶

 宝来町の薬局を出た流介は、探偵紛いの追跡をした時と同じ丁稚風のいでたちで青柳町の屋敷を目指した。  重い荷物を抱えふうふう言いつつ歩いていると、青柳坂の手前でわき道から人影が現れ流介は「おやっ」と思い足を止めた。  ――あれは、新知布由?  何かの使いの帰りなのか、布由は小さな包みを脇に抱え草履をぱたぱた鳴らすように道を急いでいた。  ――今、声をかければ家を訪ねる手間が省けるかもしれない。  流介が意を決して歩調を速め、距離を詰めようとしたその時だった。ごろごろという音と共に坂の上から大きな桶らしき物体が転がり落ちてくるのが見えた。 「――危ないっ!」 流介は咄嗟に飛びだすと、布由と落下物の間に身を投げだした。 「――ぎゃっ」  桶は流介の肩のあたりに激突すると、ぽんと跳ねあがって布由の向こう側の地面に落ちた。 「痛ててて……」  流介はその場に転がると、桶の当たった部分を押さえながら呻いた。 「だ、大丈夫ですか?」 「大丈夫です、あなたこそお怪我は……?」 「助けていただいたおかげで何でもありません。でも……ああどうしよう」  傍らにうずくまっておろおろする布由に流介は「あなたさえ大丈夫ならいいんです。届け物は急ぎませんから」と言った。  「届け物?」 「ええ。青柳町の新知さんという家に、漢方薬を届けに行くんです」 「新知……何さんですか?」 「布由さんという方です」 「それは……私です」
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