第二十六話 妖怪攫い

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「その頃の人間からして、妖怪がいることは当たり前だったんだ。けど……文明開化の発展で人間たちは妖怪の存在を忘れていき、高層ビルとか住宅地とか作っていった。そのせいか、妖怪たちの住処が失って、下界では棲みにくい状況に(おちい)ったんだ」 「そう、だったんだ……」  それだけ言って、沙希は押し黙った。  他に言いたいことはあったが、何て言えばいいのかわからなかった。  そんな沙希を見て、風夜は話を続けた。 「それを見兼ねた異界の住人たちが、住処を失って途方に暮れた妖怪を棲まわせたんだ。もう下界にいるほとんどの妖怪は異界の住民として生活しているけど、中ではごく一部の妖怪が下界に留まっている者もいる」 「どうして?」 「生まれた故郷を離れるのが名残惜しいからだろ」 「なるほど」  風夜の話によると、下界に留まっている妖怪はそれぞれ二つの生き方に分かれている。  一つは、下界で暮らす手段として、人間の真似をするように就職やバイトをしたり、自分の稼いだお金で必要最低限の家庭で生活をしているのだという。  二つは、人間社会に縛られることを嫌悪する妖怪も存在し、人間が立ち入らない廃屋や路地裏でひっそり暮らしているのだという。   ✿ ✿ ✿ 「手掛かりは掴んだものの……犯人は一向に姿を現さないな……」  沙希はリビングのテーブルに頭を突っ伏した。 「そうだな」  風夜は他人事のように座布団の上で子狼の姿でゴロゴロしていた。
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