第二十八話 訪問

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第二十八話 訪問

 梅雨が明けると、真夏の猛暑の季節がやって来た。 「ここだね」  電車で約四十分。  目的地の駅に電車がゆっくり止まる。  クーラーで快適だった車内を降りると、太陽の熱風が身を包む。 「すっご……」  改札口から出て街中を歩くと、都会の中に緑豊かな自然が広がっていた。  この光景に沙希は感嘆な声を漏らす。 「えっと……」  沙希は以前祐介に渡された住所のメモをマップアプリで検索し、画面と周りを見比べながら歩く。  高校一年の一学期が終わり、今日から夏休みが始まった。  長期の休みができたことで、沙希は神器の使い方を学ぶため、祐介の自宅に向かおうとしていた。 「この地区は観光スポットが色々あるからすごいな……。電車の中で見た並木道も綺麗だったし」  沙希が住む地区とは違い、祐介の住んでいる地区は自然と都会が融合した街だった。 「暑い……あー……暑い」  風夜は子狼の姿で、沙希の肩の上で長い舌を出しながら項垂(うなだ)れていた。 「耳元で暑い暑い連呼しないでよ。聞いているこっちが暑くなるじゃない」 「暑いモンは暑いんだ……。沙希、太陽をどっかやってくれ……」 「無茶言わないでよ……」 「じゃあ、そこのコンビニでアイス食いたい……」  風夜は小さな前足で、左方にあるコンビニを差す。
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