26人が本棚に入れています
本棚に追加
第二十四話 異界へ
早速沙希は術の発動体勢に入る。
風夜はパーカーのポケットに両手を突っ込みながら気怠そうに沙希の隣へ来る。
「よし……」
沙希は祐介が教えてもらった通りに、意識を集中させる。
そして、日本刀に流れ込む霊力が頂点に達した瞬間、風夜に向かって日本刀を掲げた。
すると、風夜の体が光に変わろうとするが、途中で元に戻ってしまった。
「あ、あれ……?」
祐介みたいにはいかず、その後何度やっても上手くいかなかった。
「結構難しいな……」
「お前にはこの術は無理だな」
横目で風夜は憎まれ口を叩く。
「だったらコツとか教えてよ!」
「この術にコツとかねぇよ」
「どうすればいいですか……?」
沙希は術の発動に構えていた手を下ろし、祐介の方に向く。
「この術は、主と式神のお互いの意思が疎通した時に発動できるんだ。風夜がそう感じるのは、戦う時に足りない物があることだな」
祐介は腕を組み、微苦笑を浮かべる。
「足りない物?」
「この術を何度も失敗するのは、沙希の意思が弱ぇからだ」
風夜の意味のわからない発言に、沙希は眉を寄せる。
「意思が弱い……?」
「お前には妖怪と戦う時の覚悟が足りない」
「覚悟が……?」
「前に体育館で戦った妖怪を覚えているか?」
「うん……――!」
紫雨との闘争の記憶が脳裏を過ると、沙希は風夜の発言の意味を理解する。
最初のコメントを投稿しよう!