第二十四話 異界へ

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第二十四話 異界へ

 早速沙希は術の発動体勢に入る。  風夜はパーカーのポケットに両手を突っ込みながら気怠(けだる)そうに沙希の隣へ来る。 「よし……」  沙希は祐介が教えてもらった通りに、意識を集中させる。  そして、日本刀に流れ込む霊力が頂点に達した瞬間、風夜に向かって日本刀を掲げた。  すると、風夜の体が光に変わろうとするが、途中で元に戻ってしまった。 「あ、あれ……?」  祐介みたいにはいかず、その後何度やっても上手くいかなかった。 「結構難しいな……」 「お前にはこの術は無理だな」  横目で風夜は憎まれ口を叩く。 「だったらコツとか教えてよ!」 「この術にコツとかねぇよ」 「どうすればいいですか……?」  沙希は術の発動に構えていた手を下ろし、祐介の方に向く。 「この術は、主と式神のお互いの意思が疎通(そつう)した時に発動できるんだ。風夜がそう感じるのは、戦う時に足りない物があることだな」  祐介は腕を組み、微苦笑を浮かべる。 「足りない物?」 「この術を何度も失敗するのは、沙希の意思が弱ぇからだ」  風夜の意味のわからない発言に、沙希は(まゆ)を寄せる。 「意思が弱い……?」 「お前には妖怪と戦う時の覚悟が足りない」 「覚悟が……?」 「前に体育館で戦った妖怪を覚えているか?」 「うん……――!」  紫雨との闘争の記憶が脳裏を過ると、沙希は風夜の発言の意味を理解する。
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