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「ユウ、お嬢たちも異界に連れて行こうよ」
「しかし……」
「お客様を留守番させる気? いい機会じゃん。お嬢も陰陽師として、異界を見ておいた方がいいよ」
唐突な提案に沙希は目を見開く。
「え? 異界って……妖怪がいる世界ですか?」
「ああ」
祐介は頷く。
「やめとけ。妖怪にビビリまくっているこいつに、異界に行くって言うわけ……」
「行きます」
異界に行くのを反対する風夜の声を沙希は遮る。
「おい、本気かよ」
「本気だよ。少し好奇心っていうのもあるけど……私も陰陽師として、異界を見ておきたいです」
行くと断言する沙希に、陽向は祐介に視線を向ける。
「ユウ。お嬢もこう言ってるんだから、いいよね?」
「西山さんがそう言うなら……いいだろう」
「よし! じゃあ決まりだね!」
テンションが上がった陽向は、沙希と風夜にウインクする。
「あ、どうやって異界に行くんですか」
「身近にある平面を使って、この刻印で異界への扉を開けるんだ」
祐介は手首に刻まれている陰陽師の刻印を見せる。
きっとそれが異界への鍵と言うことなのだろう。
その刻印を近い距離にあった道場の壁と向い合せる。
刻印が青白く光ると、直線の光が壁に右へ左へと光の線を引いて、星の形に描き始めた。
全ての線が結びつくと、真黄色に煤けた古い襖が現れた。
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