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「さ、行こう」
祐介が扉を開けると、先頭に入る。
「妖怪に喰われても知らねぇぞ」
ポツリと呟いた風夜の言葉が沙希の耳に届く。
「……! やっぱり妖怪って人間食べるの⁉︎」
「お嬢、大丈夫だよ、昔の妖怪は人間を食殺するのは珍しくなかったけど、今は御法度だからそこは安心して。現代の妖怪は人間と同じ食事でも生きていけるから」
絶句する沙希に、陽向は弁解する。
「そう、なんだ……」
「人間の血肉は妖怪からして強い依存性があるから、中毒で我を失って悪霊に心の隙を与えてしまうからね」
「それで鬼神になっちゃうんだよね。風夜から聞いたよ」
「そういうこと。妖怪が人間を喰らっていけないのはそれが理由。人間の法で例えるなら、麻薬取締法だね」
陽向が説明し終えると、祐介は心配顔で沙希を見る。
「西山さん。怖いなら、無理して来なくていい」
「いいえ、行きます!」
少しでも陰陽師としての一歩を踏み出せるならと思い、沙希は扉に足を踏み入れる。
中に入ろうとすると、不意に背後から風夜に肩を掴まれる。
「異界の妖怪は良い奴ばっかじゃない。陰陽師を狙う妖怪もいるから注意しろよ」
「え?」
「行くか」
マイペースな勢いで言われ、沙希は曖昧しか聞き取れなかった。
続いて沙希も扉に一歩足を踏み入れると、中は左右前後がゴツゴツした岩でできた一本道のトンネルだった。
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