第二十四話 異界へ

5/8
前へ
/191ページ
次へ
「さ、行こう」  祐介が扉を開けると、先頭に入る。 「妖怪に喰われても知らねぇぞ」  ポツリと呟いた風夜の言葉が沙希の耳に届く。 「……! やっぱり妖怪って人間食べるの⁉︎」 「お嬢、大丈夫だよ、昔の妖怪は人間を食殺するのは珍しくなかったけど、今は御法度だからそこは安心して。現代の妖怪は人間と同じ食事でも生きていけるから」  絶句する沙希に、陽向は弁解する。 「そう、なんだ……」 「人間の血肉は妖怪からして強い依存性があるから、中毒で我を失って悪霊に心の隙を与えてしまうからね」 「それで鬼神になっちゃうんだよね。風夜から聞いたよ」 「そういうこと。妖怪が人間を喰らっていけないのはそれが理由。人間の法で例えるなら、麻薬取締法だね」  陽向が説明し終えると、祐介は心配顔で沙希を見る。 「西山さん。怖いなら、無理して来なくていい」 「いいえ、行きます!」  少しでも陰陽師としての一歩を踏み出せるならと思い、沙希は扉に足を踏み入れる。  中に入ろうとすると、不意に背後から風夜に肩を掴まれる。 「異界の妖怪は良い奴ばっかじゃない。陰陽師を狙う妖怪もいるから注意しろよ」 「え?」 「行くか」  マイペースな勢いで言われ、沙希は曖昧(あいまい)しか聞き取れなかった。  続いて沙希も扉に一歩足を踏み入れると、中は左右前後がゴツゴツした岩でできた一本道のトンネルだった。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加