第二十五話 迷子

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 見渡す限り人が住む環境ではないことを沙希は理解した。  生温い風が沙希の肌を撫でる。 (何かヤバいところに来ちゃったかも……)  沙希は一か八か一つ民家に足を止め、正面に向かって大きく息を吸い込んだ。 「すみませ――ん! 誰かいませんか――!?」  叫んだ声は民家に反響するが、返事がくる様子はない。  しばらくして誰かが出て来ることがないとわかると、沙希は項垂(うなだ)れる。 「よぉ、そこの姉ちゃん」  次に行こうと一歩前進すると、背後から声を掛けられた。 「……!」  沙希は驚いて振り返ると、見るからにガラの悪そうな二十代くらいの青年が三人立っていた。  見た目からして狒々(ひひ)という妖怪だ。 「こんな危ない場所で一人ぃ?」  目的の人がいたものの、不敵な笑みを浮かべるリーダー格そうな男に、沙希はこの三人に関わってはいけないと身の危険を感じた。 「どっから来たの、君?」 「一人なら俺らと遊ぼうぜ!」  取り巻きの二人はケタケタ笑いながら沙希を取り囲んでいた。 「え、遠慮します!」  沙希は引き()った顔で人当たりの笑みを浮かべると、くるりと男性三人に背を向けて走り出した。 「あ、逃げちゃった。鬼ごっこっスかね?」 「じゃあ、捕まえようぜ!」  三人の狒々は楽しげに笑い、沙希が通った場所を走り出した。
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