第二十六話 妖怪攫い

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「いいえ……僕の眷属と駆けつけた時には、もう妖気が消えていて、痕跡(こんせき)も残っていませんでした……」 「そうですか……」 「我々も引き続き犯人の捜査を行います。祐介たちには下界の捜索を願います」  凛丸はその場の四人の顔を見渡し、軽く一礼をする。 「わかった。西山さん、いきなりこんなことになってしまったけど……協力してくれるか?」  異界へ行く前に、きちんと説明しなかったことを申し訳なく思っているのか、祐介は戸惑いの顔を見せる。 「もちろんです! 風夜も頑張って犯人を捕まえようね」 「俺に振るなよ……。第一その犯人がどこにいるかもわかんねぇじゃん」 「それをこれから、南雲さんたちと協力し合って、犯人の居場所を突き止めるんでしょう」 「面倒くせぇことになったな……」  やる気満々な沙希に反して、風夜は気怠げに呟く。 「あたしも協力させて」  振り向くと、真剣な顔をした和葉の姿があった。 「お願い。皆にとっては、足手纏いになるかもしれないけど……」  和葉の懇願に、凛丸は反対する素振りもなく、微笑を浮かべてこう言う。 「そんなことはありませんよ。大切な人を思う気持ちはよくわかります。こちらこそ、ぜひお願いします」 「っ! ありがとう!」  和葉はパッと顔を明るくすると、深々と頭を下げる。  次の日から、沙希と風夜は祐介たちと協力して、下界の捜索が始まった。
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