第二十六話 妖怪攫い

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  ✿ ✿ ✿  あれから一週間。  異界に続いて、下界に棲んでいる妖怪も次々に失踪し、事態は悪化していた。  今まで事件が起きた場所をまとめると、犯人は人間が多い町に棲む妖怪を襲っていることがわかった。  沙希と風夜、祐介と陽向で二手に分かれて下界に棲む妖怪たちの聞き込みを始めた。  凛丸の情報によると、秋葉原のカラオケ店で働いている妖怪が犯人を目撃したらしい。  沙希はその妖怪に連絡を取り、夜の時間帯に待ち合わせをした。  カラオケ店の場所を聞き終わった後、風夜と一緒に秋葉原へ向かった。   ✿ ✿ ✿  秋葉原に着くと、沙希が住んでいる都会よりも、高層ビルや人通りが多かった。  まさに大都会だ。 「妖怪と言ったら、人間がいない静かな森の中に棲んでいるのを想像したけど、まさかこんな大都会にいるなんて驚いたよ」 「まあ、こういう場所は色々と便利だからな」  風夜と雑談している間でカラオケ店に到着する。  待ち合わせはカラオケ店の中ではなく、従業員がゴミ出しを使用する裏口にした。 「すみません。お時間取らせてしまって……」 「いいえ。今の時間帯お客さんは少ないので、ずっとカウンターに立っていただけですから」  裏口ドアを背にして立っている二十代くらいの男性が、沙希の前で軽く両手を振る。  人間に見えるが、れっきとした妖怪だ。
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